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2021-11-28

写真を通して、自分のことを好きになるきっかけを作りたい〜小池 まゆみさん〜

 暦の上では秋を迎えた10月下旬。
 横浜のみなとみらいはその日、少し動くと汗ばむような陽気だった。

「朝 寒かったから、厚着で来ちゃったの」と笑うのは、フォトグラファーの小池まゆみ(こいけ まゆみ)さん。
 周りからは「こいまゆさん」という愛称で呼ばれている。

 現在「100人撮影」という企画の真っ只中で、その日も午前中に4人の撮影を終えてきたという。

「今日で48人かな。そろそろ折り返し」と話す彼女の大きなカバンの中には、4人分のホッカイロが入っている。

「寒かったら使ってもらおうと思ってさ。でもあったかくてよかった」

 その心遣いにすごいねと言うと「師匠の真似してるだけだよ」と笑う。

 フォトグラファーとして活動しながら、平日は会社員として働き、さらにはアロマテラピーの講師という3つの肩書きを持つ小池さん。

 写真の道へ進むことになったきっかけは何なのか、また今この年齢だからこそ思うことなど、撮影終わり1杯のビールを飲みながら話を聞いた。 

・「100人撮影」をはじめたきっかけ

 話は「何故『100人撮影』という企画をすることになったのか」という質問からはじまった。

「最初は10月に49歳になるから、それにちなんで『49人撮影』をしようと思ったの。誕生日までに撮影を終えて『ゴール!ありがとうございました!』っていう予定だったの」

 ところが、その予定は大きく狂ってしまう。
 募集開始わずか15分で、70名から申し込みが入ったのだ。

 その時のことを「嬉しいって言うよりも慌てたよね」と笑う。

 急遽、募集人数を100人に切り替えたが、それもすぐに満席となり、企画は「100人撮影」に変更した。

「まだ終わってないけど、やってよかったなあって思う。100人の方に申し込みいただくって大変なことだよね。ありがたいなって思う」

 現在、神奈川県在住。平日は会社員をしている。

 そのため、撮影は主に休日を中心に行なっているが、大阪や名古屋など全国各地へ出向くこともあるという。

 大変ではないのか尋ねると「楽しい!」と即答が返ってきた。

「もちろん、しんどい時もたまにあるけどやっぱり楽しい。撮影自体も、話を聞かせてもらったりっていうコミュニケーションも楽しい」

Photo by Akiko Shirai

 撮影をしながら、その人がどんなことをしているのか、どうしてそれをやろうと思ったのか、そんな話を聞く。

「話を聞いて、私はこう思ったよ、感じたよっていうのを伝える。もしそれを聞いて『いやそうじゃない』ってなったら、それはそれで自分の中の大事なものが見つかるし、自分がどう考えているのか輪郭が見えたりするから」

 そう真面目に話したあと、おどけた様子で「ま、単純に黙ってられないんだけど!」と笑ってみせた。

 今は撮影が楽しいと話す小池さんだが、もともとは畑違いの業種にいた。

・手に職がつけたくて進んだ医療秘書への道

 高校を卒業後、医療秘書の専門学校へ進学した。

「父が職人だったせいもあるかもしれないけど、何か専門性を持ってる人に憧れがあった。普通のOLさんじゃなくて、特別な人になりたかったの」

 資格を取得し、大学病院に就職。
 配属されたのは経理課だった。

 10年ほど働いた頃、「何か習い事でもしようかな」と思い立ち、アロマテラピーを学ぶことにした。

Photo by Itsuka Fujiki

「お料理とかフラワーアレンジの体験も1回行ったの。でもなんか違うと思って」

 ちょうど、大学病院でアロマを取り入れる医師が出てきた頃だった。
 アロマを使用することで治療に効果はあるのか、それを側から見ていて面白そうだと思ったという。

「役に立ちそうって思ったの。だったらちゃんと学びたいって。
 もともと香りが好きとか、そういうのは正直なくて。ちょっと特殊かもしれないね」

 成分のことを詳しく教えてくれる協会を探し、そこで学ぶことにした。

・なんとなくではじめた「アロマ」で講師に

 アドバイザーになるために3ヶ月間。
 さらに3ヶ月間学び、2004年インストラクターの資格を取得した。

 その少し前、大学病院の医師が独立開業することになり、色々と相談を受けていた流れで、そのクリニックの事務業務を手伝うことになった。

 平日は大学病院、週に数回はクリニック、日曜日はアロマの先生のもとでアルバイトという忙しい日々が続いた。

「アロマの先生がやってるところを、店番をさせてもらいながら見せてもらってた。そこで生徒さんを持たせてもらえたりして、ありがたかったよね」

 数年後、大学病院を退職し、手伝っていたクリニックに就職した。

 その一室で、アロマの教室を常設させてもらうことになり、そこから講師として本格的に活動をはじめた。 

Photo by Itsuka Fujiki

 最初は、アロマについての知識を伝えるのが楽しかったし面白かった。
 生徒から「こんな変化がありました」という報告を聞くのも嬉しかった。

 でも、だんだん「これは根本解決にはならないのでは」という気持ちが芽生えるようになった。

「たとえば、職場でイライラしますっていう人がいたとして、家に帰ってきてアロマたいてリラックスして眠ります。でも職場行ったらイライラするでしょ?
 それって根本解決じゃない、その場しのぎだよねって思うようになっちゃったの」

 アロマが力になれることはある。
 でも、コミュニケーションや物事の捉え方を変えないと、根本解決にはならないのではないか。

 その思いから心理学に興味が湧き、勉強をはじめた。

「でもそれは建前。本当は全部、自分がしんどかったからなんだよね」

・もっと「心」のことを知りたい

 昔から「ねばならない」という気持ちが強かった。
 自分に対しても、周りに対しても、許容範囲が狭いところがあった。

 ちょっとしたことで苛立つし、腹が立つ。

 相手によってはそれをぶつけてしまうこともあった。

「とにかく感情のコントロールができなかった。
 怒り出したら止まらなくて、怒りに呑み込まれちゃうことがあって。自分でもいいことではないと思ってるのに、どうにもできなくて」

 どうにかしたい、してもらいたい。そんな思いから心理学について学び、コーチングスクールにも通った。
 アドラー心理学の考え方やコーチングを学ぶことによって、だいぶ気持ちは楽になった。 

 今も腹が立つことや苛立ちを感じることはある。
 でも、あの頃のように怒りに呑み込まれることは減った。

「私はこういうのが嫌いだからイラッとしてるんだね、じゃあどうするかな」という考え方に変わったという。

 心理学を学んだことで、アロマの教室でもそういう話をすることが増えた。

Photo by Itsuka Fujiki

「もちろんアロマのこともお伝えするんだけど、長期講座だと3~4ヶ月あるから、生徒さんもプライベートな話をしてくれるようになって。
 いろんな話をする中で、考え方が柔らかくなったり、表情が変わったり、何かにチャレンジしたり、生徒さんが変わっていくのを見るのが楽しくなっちゃったんだよね」

 元々のアロマへの知識の豊富さに加え、新たにコーチングのスキルが加わり、教室は常に盛況だった。

 生徒たちからは「こいまゆ先生」と呼ばれ、親しまれていた。

 時には企業からの依頼で、外部講師を務めることもあった。 

 そして10年以上が経過した。

・明日が来る保証なんて、どこにもない

 2015年3月のある日、クリニックの自分の部屋でパソコン作業をしていた時、左腕に変なだるさを感じた。

「急に腕がかったるい感じがしたの。おかしいなあって。それで動かしてみたらうまく動かなくて」

 嫌な予感を感じながら、声を出そうとしたが、うまく喋ることができなかった。

 その瞬間「これは呂律障害だ。脳だ」と気付いた。

「すっごい怖かった。死ぬのかな。どうしよう。っていろんなことが浮かんで心拍数が上がったし鳥肌が立った」

 クリニックにいるスタッフに内線電話をかけた。
 うまく話せない小池さんの様子に異変を感じたスタッフは、すぐに来てくれて救急車を呼んでくれた。

 病名は「脳梗塞」だった。

「その時に、普通に明日が来る保証ってどこにもないんだなっていうのを思い知らされたんですよ。
 日本は平和じゃん。だから、自分がいつ死ぬかもなんて、意識しないで生きてる人の方がほとんどでしょ?
 でもよくよく考えたらさ、いつどこで何があるか分からない。災害があるかも分からないし、自分が気をつけてても何があるか分からないじゃん。
 そう考えたら、今日と同じ明日が来る保証っていうのはどこにもないんですね。って」

それが小池さんにとって、大きな転機となった。

・ある日 出会った『写真の原点』

 今日と同じ明日が来る保証なんてない。
 その時に考えたのは「やりたいことはやった方がいい」ということだった。

「やりたいことはやった方がいいし、会いたい人には会った方がいいし、欲しいものは買えばいい。そう思った時に『カメラを買おう』って思ったの」

 そう思うことになったきっかけは、そこから少し遡る。

 

 友人を呼んでワークショップを開催した時のこと。
 小池さんはサポートとして、その様子を撮影していた。

「その時、一人の参加者さんがすごく楽しそうに笑ってる写真が撮れて。かわいい!と思ったから、その写真を本人に見せたの。『見て見て、めっちゃかわいい!』って」

 どちらかというとボーイッシュだったその女性は、写真を見てすごく驚き「私って、こんな風に笑うんですか」と言った。

「恥ずかしそうだけど、ちょっと嬉しそうだったの。今、写真を見て自分のことを『ちょっといい』って思ってるんだろうなって思ったの。それが嬉しかった」

 もともとアロマ教室のブログに載せるために、レッスンの様子を撮影していた。
 それは「集客のため」だった。

Photo by Itsuka Fujiki

 でも、その日その瞬間、小池さんの中で「写真を撮る理由」が変わった。

「自分の写真を見て、自分をちょっといいなって思えたりしたら、自分のことが今よりも好きになれたりする。それってすごくいいなあって。
 それが私の『写真の原点』になってる」

「もっと素敵に撮れるようになりたい」そのためにもカメラが欲しい。
 でも、仕事にするわけじゃないし…そう思い、躊躇したまま時が過ぎていた。

 だから、退院してすぐにカメラを買った。

 「でもやっぱりまだ一眼レフは買えなくて。エントリー機っていうのかな。レンズが交換できるカメラを買いました」

Photo by Mayumi Koike

 その時はまだ、カメラを仕事にする気はなかった。
 でも撮った人たちから「仕事にしたらいいんじゃないか」と勧められることが多く、踏み出すことを決めた。

「撮る人になるなら、撮られることにも慣れないと」と思い、ポートレート撮影を申し込んだ。

 でも実のところは「…っていうのは表の理由で、多分裏では『何か変わりたい、変えたい』があったんだよね」という。

 気づけばまた「頑張るモード」のスイッチが入ってしまっていた。

・かっこよくなきゃいけない、そんな思いに縛られていた。

 いつの間にかまた「ねばならない」に縛られていた。

 周りから見た自分に合わせて「強くかっこよくなきゃいけない」と思い、苦しくなっていた。

「めっちゃ頑張ってた。表ではさ『自分にOK出そう』とか言ってたけど、自分が自分にOK出してなかったよね」

 その頃、「かわいい」と言われるのがすごく嫌だった。
 下に見られているような、馬鹿にされているような気がした。

「自分が誰かに『かわいい』って言う時は、そんなこと微塵も思ってないのにね。人に言われると、そうやって変換してた」

 なんでも優劣で考えていた。
 勝ちたい。負けたくない。
 でももう、そんな自分でいることがしんどかった。

 『変わるきっかけが欲しい』

 そんな思いで撮影を申し込んだ。

 後日、撮られた写真を見て心に浮かんだのは「ちょっといいかも。かわいいかも」そんな気持ちだった。

 多分本当は「かわいい私でいたい」という思いが、奥底にあった。
 でも気づかないふりをして、怒りに変えていた。

 カメラマンに「かわいいもかっこいいも、どっちもあったっていいじゃん。どっちか片方の人なんていないでしょ」と言われたこともきっかけになった。

「一度、かわいいをやってみよう」そう決めた。

・思い切り「かわいい」をやってみよう

 今までだったら着ないような、小花柄のワンピースを着てみたり、ずっとショートカットだった髪を伸ばし始めたりした。 

「あと『はしゃぐ』っていうことをしてみようと思った。ちゃんとしなきゃいけない、いい大人がはしゃいだらいけないって思ってたけどやってみよう、って」

 最初は無理してはしゃいだ。頑張って楽しんだ。
 その繰り返しで少しずつ変わっていった。

 その変化を知るために、定期的に写真を撮られることにした。

 写真の中の自分の顔が、雰囲気が、変わっていくのを実感した。

「顔がすごく穏やかになったなあって、自分でも感動しちゃったよね」

 写真に写った自分を見て、思わず涙したこともあるという。

 ずっと「強くかっこいい大人の女性」でいなきゃいけないと思っていた。
「かわいい」なんて、と思っていた。でも今は違う。 

「自分の中に、かわいいも、かっこいいも、綺麗もエロいも、全部欲しい。全部欲しいの!って今は言えるし、そうやって開き直って意識するようになったら、色々変わったよね」

「そういえば!」と小池さんが思い出したように言った。

「最初の頃、人に『かわいくなった』とか『変わった』って言われると、『まあ、髪が伸びたしね』って言ってた!まだ受け取れてなかったんだね」

 いつからか、その言葉を言わなくなった。
 自分の中に「かわいい」があるのが、当たり前になっていた。

・自分を好きになって欲しい 

 2020年、改めて写真を学び、プロのフォトグラファーとして活動をはじめた。
 自分自身の経験から、写真は変化するための強いツールになると確信がある。

「いくら言葉で言っても受け取れない人は山ほどいるし、時間がかかる。でも写真は早いの。見たらすぐ分かるから」

Photo by Mayumi Koike

 どんなに「あなたの笑顔は素敵だよ」と言っても伝わらない。社交辞令だと思ってしまう人もいる。

 でも、自分で写真を見て「あ、ちょっと素敵かも」そう思えたのなら。

「自分の中から湧いて出てきたその言葉は、社交辞令でありようがないでしょ?」

 

 この世で自分だけは一生付き合っていく相手。
 だから自分のことを好きになって欲しいと、強く思う。

「死ぬまで何十年も自分のこと嫌い嫌いって思うより、私結構好きだなって思った方が絶対いいじゃん」

 自分を好きになるそのきっかけを、写真が与えることはできる。
 でもそこからどう変わるかは、その人自身の力だという。

「私が変えてあげたいとか、幸せにしてあげたいとは思わない。刺激やきっかけは私が作ったかもしれないけど、そこからはその人次第だし、その人の力だから。
 たとえば撮られた写真を見て、自分の嫌いなところばかり見て『だから写真って嫌い』って思って終わってしまう人もいると思う。
 そこで『この表情かわいいけど、やっぱり腕が…』とか『私って猫背だったんだ』って気付いて、ちょっと気をつけて日々意識したら変わっていくわけじゃない?
 そうやって良い方向に転がるきっかけになったら嬉しいなあって思う」

Photo by Mayumi Koike

・カメラに出会えてよかった。

 プロのフォトグラファーとして活動をはじめて2年弱。
 どんな瞬間が一番楽しいのか尋ねると「難しいこと聞くなあ」と少し考えながら、こう答えた。

「撮影しているのも楽しいし、感想をもらった時も嬉しい。
 その人の…なんて言ったらいいんだろうな、感じたこととかを言葉にして伝えてもらえた時とかは、めちゃくちゃ嬉しいよね」

 直接メッセージをくれる人もいれば、小池さんが撮った写真をSNSに投稿する人も多い。

「『はじめて自分の写真を見てかわいいって思いました』っていうメッセージもすっごい嬉しいし、あとSNSの投稿についたコメントを見るのも嬉しい」

 小池さんが撮った写真の投稿に「かわいい!」「素敵!」というコメントが並ぶのが、嬉しいのだという。 

Photo by Mayumi Koike

「私の写真を褒めて欲しいっていうことじゃなくてね、そういう言葉のシャワーをこの人が浴びてるってことが嬉しい。そのことで『私ってそんなに素敵なんだ』ってセルフイメージが変わったり、新しい発見があったりするかもしれない。それがすっごく嬉しい」

 少し前に、小池さんの元にひとつの感想が届いた。

 それは「100人撮影」で撮影した一人の女性が、SNSへ投稿したものだった。

 小池さんが撮影した笑顔の写真ともに、今の思いとこれからの決意が綴られていた。
 その中の一文に、こう書かれていた。

『これからの私に、こうご期待』

 これを見たとき、胸が震えた。

「自分で自分に『こうご期待』って。これが言えるってすごいことだよねって。すごい感動しちゃったんだよね。それをオープンにみんなに宣言できるって、すごいことだなって」

 話しながら、思わず涙が込み上げる。

 今回の撮影で、たくさんの人から感想をもらった。
 その一つ一つが「宝の山だなって思う」と話す。

「すごく幸せな気持ちに、いっぱいさせてもらってさ。泣けてくる(笑)」

 そう言って、涙をぬぐった。

「カメラに出会ってよかったなあって思う」

 噛み締めるように呟いた。 

・いくつからだってチャレンジはできる

 来年50歳を迎えるこのタイミングで、17年続けたアロマ講師という肩書きを手放すことにした。

「興味のポイントが自分の中で変わったっていうのが、一番だと思う」

 だから、きれいさっぱり手放すことにした。

 この年齢でキャリアチェンジをすることに、不安がないわけじゃない。
 でも「自分や未来に対する期待度は、今の方がある」という。

「女性って特に『若い時の方がよかった』みたいなの、あるじゃん。でも私は今、自分のことがこれまでの中で一番好きでいられてる。それはこれからもっと更新されていくんだろうと思ってる」

 もちろん、過去の自分もその時その時で頑張ってたと思う、と続ける。

「年齢がいけばいくほど、いろんなことにチャレンジするのってリスクがあるって思いがちで、いろんなこと諦めるけどさ。いくつだってチャレンジしようと思えばできるじゃん。って今は思う。
 それぞれ環境や状況もあるかもしれないけど、でも『こういう自分になりたいな』『こんな風に変わりたいな』って願うことだったりさ、そこに向けて何かやってみようってチャレンジするのはできるじゃん。いくつだって」

Photo by Aki Iwata

 年齢を重ねてるからこそ、分かることや使える武器もある。
 それまでの人間関係があるからこそ、助けてもらえることもあるかもしれない。手を借りられるかもしれない。

「結果が出るかどうかは分からないし、すぐ変われるかも分かんないけどさ。でもチャレンジしてみなかったらそこにはいけないじゃん」

 いくつからだって、チャレンジはできる。
 そのことを自分の活動を通して感じてもらえたら、という。

「私も何かやってみようかなって、思ってもらえたらいいなって」
と言って、ふわりと笑った。

・さいごに

 実は、小池さんの中には「100人」という数にトラウマがあった。

「コーチングスクールに通ってた時『100人コーチング』に挫折してるんだよね」

 途中、脳梗塞で倒れたのも理由のひとつではあったのだが、彼女の中で「自分は最後までやりきれない人だ」というコンプレックスのようなものが残ったという。

「本当は『49人撮影』をはじめた時も『100』っていう数字がよぎらなかったわけじゃないんだよ。でも、他の仕事もあるし、とか、体のこと考えなきゃな、とか。そういう逃げのようなものがあったんだよね」

 昔からずっと、自分に対して「中途半端だな」という思いがあった。
 いつも、ある程度のところまでのスタートダッシュは早いという。

「でも、そこからの伸びがあんまりないタイプなのね。成績だってトップクラスになったことはないし、何かが突出して得意なものもない。なんでも、そこそこできるぐらいで」

 今回、そのコンプレックスを乗り越えることができた。

「だから100人っていうのをやれたのは、すごく意味がある。最後まで撮りきれたら、またひとつ自信になるんだろうなって思う」

「ああ、また泣いちゃった」と言って、目尻に浮かんだ涙をぬぐった。

 100人撮影が終わるのは、12月中旬を予定している。
 終わった後のご褒美は何を考えているのか問うと「えー、考えてない」と答えた。

「次、何をしようって考えてる。何をして楽しもう?楽しんでもらおう?って。

 だからご褒美は何も考えてない。これがゴールじゃないから。次が始まるだけだから」
 大きな瞳を細めながら、嬉しそうに話す姿を見ていると、こちらまでワクワクしてくる。

 一見華やかに見える世界で、自分の気持ちと真摯に向き合いながら、逃げずにここまで進んできた。

 この先、彼女はこの世界に何を見つけるのだろうか。

「ほら、回遊魚気質だから!止まったら死ぬ、みたいな?」と言って、からからと笑う。 

 ちょっと涙もろい彼女はこれからもきっと、泣いたり笑ったりしながら、大海原を泳ぎ続けていくのだろう。

 きっと、楽しい航海になるに違いない。

 大きなカバンを持って歩く彼女の後ろ姿を見ながら、そんなことを思った。

小池まゆみさんFacebook https://www.facebook.com/mayumikoike72

撮影メニュー https://peraichi.com/landing_pages/view/koimayuphot/

インスタグラム(フォトギャラリー) https://www.instagram.com/koimayu_photo_/

インスタグラム(プライベート) https://www.instagram.com/mayumi_koike_/

note https://note.com/koimayu3


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